(児童虐待防止へ)親権最長2年停止を内容とする要綱案について
一、はじめに
親の虐待から子供を守るため親権制度の見直しを検討している法制審議会(法相の諮問機関)の部会は,平成22年12月15日,家庭裁判所の判断で親権を一時的に停止することができる制度の新設を盛り込んだ要綱案をまとめました。これは,来年2月の法制審議会の総会で最終決定し,法相に答申され,それを受けて,政府は通常国会に民法改正案などの関連法案を提出する予定です。この法案の提出は,児童虐待が多発している現状からして,まさに時代の要請にかなうものであり,おそらく,国会でも,賛成多数ということで,この法案は成立するものと思われます。この法案が成立しますと,おそらく,遅くとも,平成24年1月頃には施行されることになると思われます。
二、親権停止制度の内容
親権停止制度は,現在多発している,子供に適切な治療を受けさせない『いわゆる医療ネグレクト(放棄)や虐待が疑われて施設に入所した子供を親権を盾にして連れ戻そうとする行為などへの対応策として想定しています。具体的には,子や親族,検察官などの申立てを受け,家庭裁判所が虐待など子の利益が害されると判断すれば,親権を最長2年間停止するとするものです。この『2年』というのは,児童福祉法で子供を強制的に施設に入所させることができる期間である『2年未満』を参考にしたものです。
三、親権停止制度の趣旨
親権の利用に対応するための現行法の制度は,『無期限の親権喪失のみ』であります。しかしながら,現場から,上述のような現象が生じた場合に,現行法の内容ですと,どうしても『無期限で親権すべてを失わせることになってしまうため,親権を乱用している者が反省すれば足り,そこまではしたくないということで,親権喪失の申立てに踏み切りにくい』との指摘が出ていました。そこで,このような現象が生じた場合には,その虐待等に対し迅速かつ柔軟に対応するためには,『無期限の親権喪失』ではなく,親権の一時停止制度を設ける必要がありました。
四、要綱案の要点
この要綱案は既存の親権喪失制度を見直すものであり,その要点は次のとおりです。
第一に,『子の親族と検察官』に限っていた親権喪失の請求者に,『子本人と未成年後見人』を加えました。
第二に,状況が改善されれば,親や親族が取消しを請求できるわけですが,逆にこれが改善されなければ『親権停止期間の延長』も可能としました。
第三に,未成年後見人の条件を緩和することにより,虐待を受けて児童を施設に保護した『社会福祉法人など』が後見人に就任することが可能となりました。
第四に,親権停止中に子供を保護し,財産を管理する後見人はこれまで『1人』とされてきましたが,そうしますと,その1人の後見人の負担・責任が大きく,この場合に後見人になってくれる人がいなくなってしまい,その結果として,この場合における後見人を確保できないという現象が生じたので,後見人を複数選任することを認め,共同して,財産を管理することができるようにしました。これは,このようにすることによって,後見人の引き受け手を増やし,親による親権行使を停止する間の受け皿を確保する狙いです。
第五に,子供の監督,教育のため親が子供を叱ることができる『懲戒権』は,『子の利益のため』との要件を追加することによって,子の利益のためにのみ懲戒権を行使することが認められるだけであって,子の不利益となる形での懲戒権の行使は絶対に許されないとすることにより,まさに『しつけ』と『虐待』の区別化を図っています。
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